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DESIGNER TALES
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『Destination that doesn't exist』 1
『Destination that doesn't exist』
~ 黄金の昼下がり - The Golden Afternoon - Extra Track ~

「もう存在しない人」ではない。
僕にとっての彼女は、
「存在しない人」なんだ。


 そしてまた、同じような朝がやってくる。
 その朝に僕は、G4のキーボードの横に置いてある携帯に、いつ着信があるか、もしくは知らないうちに着信していないか、ベッドを整えたり、コーヒーを飲んだり顔を洗ったりしている間も常に気にしている。
「だから、なに存在しない人の事を......」
 会社へ行く支度をしながらiBookを起動してメールチェックをする時も、飛行機が空を切る音の後に“Kei”の文字を探している。
「だから、なに存在しない人の事を......」
 出勤途中、バッグの中でマナーモードに入っている携帯が振動するのを待っている。事務所に着いて、デスクの右端に積んであるMOの上に携帯を置く時も、まずはサブディスプレイに彼女の名前を探した。電車を降りてからの人混みの中を歩いている間に振動に気付けなかったかもしれないからだ。
「だから、なに存在しない人の事を......」


 病院を出た僕が早々に仕事に復帰した理由には、作業に没頭していればそのことを忘れられるかもしれないと思ったというのもあった。実際、相変わらず忙殺寸前の毎日に戻ったのは確かだったが、しかし“忘れられるかもしれない”というのは見事にハズれてしまった。考えれば忘れるなんていうのは現実味がないぐらい無理な話だ。その証拠にいつだってMO山の上の携帯を視界の隅に入れていた。一服しにフロアの隅にある喫煙スペースへ行く時は、必ず携帯をポケットにねじ込んだ。
「だから、なに存在しない人の事を......」
 その度にまた、そんな風に心の中で言いながら。

 フと集中が途切れ、モニタから顔を上げた僕は大きくノビをしながら次に壁の大きな時計を見る。今の時間なら、彼女もちょうどバイトの休憩時間だろう。今日はおやつの大きなプリンの写真でも撮って、
『いいだろぉー!』
 って自慢メールをしてくるかな。おあいにく様。僕は甘いものが苦手なんでね。
『そんなん食べたくないもーんだ(-_+)凸』
 なんていう僕の返信に、彼女は大いにムカつく頃かな。思わず頬が弛んでしまう僕は、それを同僚に見られないようにまた、喫煙スペースへ足を向ける。
「だから、なに存在しない人の事を......」
 でも次の瞬間にはもう、大きな窓の外の青い空にかかった雲のカタチが面白くて、景にも見せてあげようと携帯のカメラを起動しているのだ。
「だから......」
 そうしている間に、景に見せたかったライオンの顔みたいな雲のカタチは風に吹かれて崩れてしまった。

(つづく)
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